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「ライブハウス・エクスペリエンス」アブラコラム

2020/05/28
 
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アブラリュータ
アブラジョー りゅうた プロフィール 爆音ファンキー3ピースロックンロールバンド、 「アブラジョー」の作詞作曲とギター・ボーカルを担当。 鳥取生まれ、広島育ち、 でも人生で一番長く住んでるのは所沢、なので埼玉愛めちゃ強い。 手羽先と蕎麦と貝をこよなく愛する。 自転車と温泉旅行と料理とDIYが趣味。 メカ音痴だがメカ内部を鑑賞するのは好き。 機材の分解は好きだがハンダのスキルはゼロなので大体取り返しがつかない。 「アマゾンプライムをよく観る」と公言しているので映画好きと思われがちだが ウォッチリストには主にアクマイザー3や忍者キャプターやジャッカー電撃隊 みたいのが入っているだけなのであんまり深く立ち入らないでほしい。 ちなみに好きな映画は刑事コロンボ。 アブラジョー公式サイト http://www.aburajoe.com

田舎から上京して来たミュージシャン志望の若者にとって
「初めて行く東京のライブハウス」というものには特別な意味がある。

立ち込めるタバコの煙、
タトゥーだらけのヤバい奴らがひしめく薄暗い地下空間(※注:イメージです)
上京して初めて入ったその箱で偶然、
客として居合わせたまだ名もなき俺と見知らぬその男。
俺たちは互いにサンダーがライトニンして運命的な出会いを果たしバンドを結成、時にぶつかり合い、時に励まし合いながら成長していき、
ついには伝説のバンドへと昇りつめていく。
そう、全ては東京で初めて入ったあのライブハウスから始まったんだ。

とまあ、これが正しい「中二病的東京サクセスストーリー」なのな。
だから上京して初めて行くライブハウスというのはめっちゃ重要なんである。

これはもうかれこれ30年以上も前、19歳の時の話だ。

ギター1本担いで広島から東京へ、あてもないままノコノコ上京して来たものの、
友達一人いない東京でどうやってバンドを組んだらいいのか分からず、
ヨシじゃあライブハウスにでも行ってみようと思うものの、
インターネットもなく情報量も少なかった時代、
どこに何というライブハウスがあり、そしてそこへはどうやったら行けるのか、
ド田舎者のワシには皆目見当もつかない。
それどころか当時のワシは
「新宿ロフトて、名前は聞いた事あるな」
くらいの無知さであった。


要はバカだったんである。


「何を思って何を根拠に何しに出て来たんだお前は」

とあの時の自分に説教してやりたい。

ひとまずは音楽プロモーション関係の会社で働けることとなり、
そこで多少なり「音楽仲間」と呼べる知り合いは出来た。
ある日、そこの主任のKさんがこう誘いかけて来た。

K「俺さ、今度世田谷の『G』てライブハウスで2マンライブやるんだよ。
  りゅうた君よかったら来ない?」

りゅ「2マン?凄いじゃないっすか!
   2マンってたくさん人呼べるバンドしか出来ないアレっすよね!
   『G』って知らないけど有名な箱なんすか??」

K「フフッ、そうだね、
  りゅうた君は知らないだろうけど『G』はアルフィーのホームだった箱として
  東京では超有名なとこだよ」



…あるふぃー?


微妙だ。

そもそもKさん、「小太りでカーリーロン毛に口髭」という
「ほぼ佐藤蛾次郎」という容姿の時点ですでに微妙なのにアルフィーのホーム…
ちなみにKさんのバンドはどんなバンドなんすか??

K「あ、俺はバンドじゃなくてアコギの弾き語りだよ」

弾き語り?
蛾次郎が?
世田谷の?
アルフィーの箱で?

ビミョ〜〜〜〜〜。。。

とりあえずライブ当日、
地図を見ながらどうにかライブハウスGに到着。

ここかぁ。
ワシにとって初めての東京のライブハウス、
今からここでメンバーと運命的に出会い、ついにワシの伝説が始まるんやね。
いざ!オープン・マイ・デスティニー!

意気揚々と扉をあけて中に入り、まずタマゲる。

え?
東京のライブハウスって、こんななん?…

ムーディーなジャズのBGMが流れる狭い店内。
椅子とテーブルが一定の間隔を空けて並べられているその空間は、
ライブハウスというよりも「隠れ家レストラン」という雰囲気であった。

そして客席には誰もいない。

奥にあるステージ上にKさんがポツンと座っていた。

りゅ「あ、すいません。まだリハ中でしたか?」

K「いや、もう始まるところだよ」

りゅ「え?…でも…お客さ…」

K「そのうち来るから!さぁ!りゅうた君座って!」

恐る恐る真ん中あたりの席に座り、場内を見回す。
と、客席の一番後ろにあるカウンター席に女が一人座っているのに気づいた。

「あ、その子オレの彼女ね」とKさん。

あぁ彼女さんでしたか、どうも〜とご挨拶。

その彼女、
バブル時代の象徴とも言える超ミニのボディコン姿。
スラリと伸びた長い脚、くびれた腰、そして大きな胸が
ピチピチの服で強調されて超セクシーダイナマイト。
そして、目はブー、メガネは仲本、眉毛は茶、鼻から下はちょっといかりや、
そしてエラからアゴの輪郭が志村という、ある意味ミラクル、ある意味イリュージョン、
「混ぜるな危険」を体現する奇跡のドリフ・オールインワン・フェイス!
ヨッ!耳たぶ美人!

しかも挨拶したワシに対して会釈するとかニッコリ微笑みを返すとかでもなく、
タバコを燻らせながらブスっとした冷徹な細い目でこちらを睨み続けている。
何なの?狙撃中のゴルゴなの?

そしてよく考えてみると、
「もうすぐ始まる」という割に場内にはKさんと彼女とワシの3人しかいない。
あれ?対バンは?

りゅ「あのKさん、ところで2マンの相手のバンドさんは?…」

こう聞くとKさんはバツ悪そうに頭をポリポリ掻きながら

K「う〜ん、なんか全然来なくてさ〜、
 店から電話してもらったんだけど誰とも連絡取れないらしいんだよね。
 仕方ないから今日は急きょワンマンて事でやろうかなと」



え?…東京のライブって、そうなん?…

まさかの対バンバックレ。
衝撃だった。
別な意味でサンダーライトニンした。

唖然とするワシをよそにKさんはそう話し終わるやいなや
いきなりジャカジャカジャカジャカ〜〜とEコードを弾き

「ハ~~イ皆さんこんばんわ〜!」

と唐突に大声を出した。

え?
Kさんどしたんスか?
あ、始まったのか、
え?「皆さん」て?
あ、ワシのことか。

脳の処理が追いつかないままライブに突入。


Kさんの楽曲もまた、
脳の処理が追いつかない地獄ソングのオンパレードだった。

何曲目だったか、かぐや姫とビリーバンバンとガロを足して
3で叩き割って生き埋めにして2ヶ月放置したような
腐敗臭漂うバラードがあったんだが、どんな曲か実況形で歌詞を要約すると

1番:雪空の下、僕は君に別れを告げ、そして君は肩を震わせて泣いている。
   君は僕の胸にもたれかかり、僕は黙ってその肩を抱き寄せる。

(ははーん「君を嫌いになったわけじゃないけど別れよう」的なアレね)

2番:楽しかった二人の思い出エピソードをひたすら回想。
   晴れ渡る空、君の瞳はキラキラと輝き、僕も笑顔でいっぱい

(…何の話?)

3番:いつしか熱い口づけを交わす二人
   これから君と二人、手を取り合って歩いて行こうよ永遠に〜!


別れ話どこ行ったんや!


完全に着地点が行方不明のまま、ラブラブハッピーに終了する別れのバラード。
カオス過ぎるだろ。

もちろんMCも地獄。

「え~、今日はお越しいただいて本当にありがとうございます」

普段偉そうにワシに命令しているKさんが、
ワシ一人しかいない客席に向かってひたすら敬語で媚びまくる。
気まずさ拷問級。

「皆さんのおかげで今日は本当に楽しい夜です」

ワシ一人にのしかかる「皆さん」の役割が重すぎ…

お願いそろそろ誰か…誰か来て…

だが本当の地獄は最後にやって来た。

K「え〜、じゃ最後に、僕のキラーチューンと言える曲をやります。
  とても元気で明るくてハッピーになる曲です。
  それじゃ聴いてください『飛び出せサマー』」


…飛び出せサマー!?

何そのイヤな予感しかしない地獄タイトル。。
いやいや、急に飛び出したりしたら危ないから一旦落ち着いて!
「おとなしく家にいようよサマー」とかにしときません?

ワシの不安をよそにKさんは軽快に小気味よく
ジャンジャカとストロークを刻み、歌い出した。

「♪走りだそうよサマーーーーー!
  夏のせいさ〜、君が〜、ま〜ぶしすぎるぅ〜♪」

うわ何これ…臭みがエグい…

いやホントにそれ夏のせい!?
何か変なキノコ食べたせいとかじゃなくて?

そして曲の中盤、一番盛り上がって来たところで
Kさんは突如ギターを弾くのをやめ、
両手を高々と頭上にあげ、
「ン、パン!ン、パン!」と
2拍4拍の手拍子を打ち始めたかと思うと、
あろう事かこう叫んだのである。

「さあ!みんなも一緒に!」




えぇぇぇ!?



おぅコラK!
ここでお前が言う「みんな」というのはワシ一人の事であって
「みんなも一緒に」て言うのは「お前も一緒に」と同義語であって
「飛び出せサマー」に乗せて一人ぼっちで頭上クラップハンズしろだなんて、
それはお前、血も涙もない悪魔の所業やぞ!
ワシを殺す気か!

とりあえずヘラヘラと苦笑いを浮かべながら「勘弁してくださいよ~」的な
空気を一生懸命醸し出してみたものの、Kさんはひたすら手拍子を打ちながら
その眼差しは空だけを見つめ、ワシの事はまるで意識にないよう装い、
そのくせワシが頭上で手拍子するまで絶対にやめないという固い決意があるのか
いつまで経ってもどれだけ長時間耐え忍んでも手拍子をやめない。

「ワシ待ち状態」で虚しく延々と鳴り続けるKさんの手拍子。
ピンスポを浴びて、ただジッとうつむくワシ。



ええ、地獄絵図でしたよ。


そうだ、もしかしたら彼女が助け舟を出してくれるかも!
かすかな期待を胸にそ~っとカウンターの方を振り返ると、
そこには、相変わらずタバコの煙を燻らせながら
細~いスナイパーのような目でワシをにらみ続けている
ドリフ・オールインワン女がいた。

「おめぇが手ぇ叩かねぇから終わんねぇだろ」

殺し屋の目がそう語っていた。

ワシは再び静かにステージの方を向き直ると
大きく息を吸い、


「イェーーーッ!!」


サンシャイン池崎のようなヤケクソな奇声を発しながら
狂ったように頭上で手を叩いた。

やるしか。
そう、もうやるしか帰れる方法はないんや…

ワシの頬には涙が伝っていた。

そして多分、そのまま手を叩きながら気絶していたのであろう、
その後どう終わったのか、どうやって帰ったのか、もう全く記憶にない。

こうして「最後まで観客ワシ一人」という忌まわしい東京初ライブハウス体験は終わり、
そのトラウマが呪いのように魂に絡みついたせいかどうかは定かでないが
ワケあってその後約10年近くの間、ワシはバンドやライブハウスと
全く縁のない生活を余儀なくされた。

30歳を過ぎてようやくアブラジョーというバンドを組み、
様々なライブハウスでライブをやらせてもらえるようになったが、
それは個人的にはあの日の呪縛を解く旅というか、
もしくは四国八十八か所霊場を巡るお遍路さんのような心持で
ライブハウスに通わせてもらっているのだ。

なので、全国の全てのライブハウスには何としてもこの危機を踏ん張ってもらわないとまだまだ続くワシの巡礼の旅的にも非常に困ってしまうんである。

アブラジョー りゅうた

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アブラリュータ
アブラジョー りゅうた プロフィール 爆音ファンキー3ピースロックンロールバンド、 「アブラジョー」の作詞作曲とギター・ボーカルを担当。 鳥取生まれ、広島育ち、 でも人生で一番長く住んでるのは所沢、なので埼玉愛めちゃ強い。 手羽先と蕎麦と貝をこよなく愛する。 自転車と温泉旅行と料理とDIYが趣味。 メカ音痴だがメカ内部を鑑賞するのは好き。 機材の分解は好きだがハンダのスキルはゼロなので大体取り返しがつかない。 「アマゾンプライムをよく観る」と公言しているので映画好きと思われがちだが ウォッチリストには主にアクマイザー3や忍者キャプターやジャッカー電撃隊 みたいのが入っているだけなのであんまり深く立ち入らないでほしい。 ちなみに好きな映画は刑事コロンボ。 アブラジョー公式サイト http://www.aburajoe.com

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