全国アーティスト総合サイト

[ライブハウス] the seadays 渡辺りょうコラムvol.1

 
この記事を書いている人 - WRITER -
渡辺りょう
渡辺りょう 1993年生まれ。静岡県出身。京都のバンド、the seadaysのGt/Vo。 音楽活動以外では、フード出店や大喜利、映画監督等の何をやってるか分からないけど何だか楽しそう、という感じで生きている

初めてライブハウスに行った時の事を鮮明に覚えている。

しかし、その時のライブの内容をあまり思い出せない。僕の感情や感覚が脳の理性的な機能を遥かに凌駕してしまっていた。その時の事を心情を交えながら記していきたいと思う。

2011年4月、東北大震災から約1ヶ月、僕は初めてライブハウスに行った。当時の僕は高校3年生。音楽とは『人と違っていたい』という自分なりのアイデンティティの表現方法の1つだった。クラスメイトのほとんどの人間が知らない音楽を見つけては聴いて、無理矢理に共感してみたり、歌詞から読み取れる哲学を享受してみたりした。こんな風に前置きをしているんだから、さぞマイナーなインディーズバンドや外タレバンドかと思うだろう。

否、今思えばガッツリメジャーデビューしてるし、アニメとタイアップしていた『Base Ball Bear』を誰も知らない、僕を僕たらしめるモノとしていた。まあ、結局はそんなもんだ。Mステに早く出てよ!と身勝手に言ってくる同級生達の気持ちは、この時の自分で考えたら痛いほどよくわかる。クラスメイトが知らなかったらその時点で無名なんです。なんていう暴論は案外間違っていないような気もする。

話が逸れたので戻す。
そんな僕を僕たらしめるバンドが新譜を出し、ツアーをするというお知らせを目にして、新譜もツアーもその意味も大して分かっていない僕はwindowsXPを起動、InternetExplorerからチケット購入!お母さん!お金渡すからやって!なんて言いながらチケットを手に入れた。

ライブ当日、同じ学年でベボベの話だけするサッカー部の同級生とライブハウスへ向かった。自分の街にライブハウスがあることも知らなかった。当時はガラケー。地図は前日にInternetExplorerに穴が開くほど眺めて頭に入れた。全ての教科書を入れたエナメルバッグを担いで学ランで40分間の自転車ダッシュ。途中、線路の向こう側に行ってしまった事に気づき、駅の中にチャリを何とか入れて乗り越える。さあライブハウスが見えてきた。そこには驚愕の景色が。ベボベのこと知ってる人こんなにいるのか?いや、我が街にこんなに人いるのか?というような長蛇の列。チケットには整理番号なるものが記載されているが、早く着いた人より整理番号が優先されるかどうか知らない!あぁYahoo知恵袋で聞いておけば良かった…。

何となーくの空気感で整理番号順になんとか入り込むことが出来た2人。楽しみで心臓がバクバクする。するとスタッフの口から聞いたことのないワードが聞こえる。『クロークご利用の方は500円用意しといてください!』

クローク?
現在の僕もロッカーや荷物置きのことをクロークというのは抵抗がある。
当時の僕は何がなんだかわからなかった。
500円という高校生にとって安くない金額が取られる謎のシステムなんか利用するわけがなかった。

さあ入場、初めてライブハウスに足を踏み入れる。
なんかいっぱいステッカーが貼ってある。なぜ貼ってるのか、理由は皆目見当もつかない。受付でチケットを渡すと何故か500円を要求され慌てて小銭を出す。すると『DRINK THICKET』と書かれた小さい紙を渡される。

いよいよ意味がわからない。
何故欲しいと一言も言っていないドリンクを強制的に500円という法外な値段で取られるのか。
ただ、ここで狼狽ていては舐められる。
僕はただ前を見つめてフロアに向かった。開演時間が迫るにつれて人が入ってくる。肌が触れ合う距離になる。怖いけど、

これがライブハウスか…

なんて思いながら開演時間を待つ。
さあ始まるぞとなった時にとんでもない過ちに気づく。皆さんはお気づきだろうか。肌が触れ合う程のギュウギュウのライブで僕は全ての教科書を入れたエナメルバッグを持ち、学ランを着たままだったのだ。とんでもない失敗をした。もう、後戻りはできない…。小さい声で『ごめんなさい』をつぶやき開演時間を待つ。開演時間19時。

さあ始まる。始まる。始まる…始まらない…?
え?プロのライブで19時ちょうどに始まらない…?

意味が全く分からないが、怒号が飛び交うもんだと思っていたがフロアのみんなは受け入れている…中止か?え?なんか10分ほど経つとかかっていたBGMが大きくなり小さくなった。そして暗くなりまたBGMがかかった。
意味がわからないけど、なんか始まりそうだということだけがわかった。

XTCの『Making Plans For Nigel』がかかりBase Ball Bearの面々が出てくる。何度も音源を聴き、YouTubeで何度も見て、深夜帯の音楽番組を録画して生活の中心だったバンド本人達が目の前にいる。フロアから歓声が上がり鳥肌が立つ。メンバーはチューニングというものをしている。さっきスタッフ(ローディー)の人やってたよなんて思っていた。いよいよ始まる…。『こんばんは、Base Ball Bearです。』その一言を放った直後、人生で聞いたことのない、破壊的な爆音が耳を襲った。そこからは記憶がない。

全てが終わり脱水と酸欠状態でライブハウスを出た。僕は『死ぬかと思った!死ぬかと思った時に、生きてることを実感した!だからLIVEって言うのか!』なんていう名言を残し、お母さんから借りた大金で物販を買おうとする。物販ブースには本人達がいる。意味がわからない。基本的に意味がわからないまま家に帰り、Internet Explorerでセットリストなるものを検索し、iPodでその順番のプレイリストを作った。その瞬間、この日のライブは永遠になった。

これが僕の初ライブハウス体験だった。聞いたことのないワード、暗黙の了解、説明されないルール。その全てが不親切でありながら、知らない世界に飛び込み、非日常を味わい我を忘れて楽しむ重要な要素になっていた気もする。

翌年僕はギターを買った。BaseBallBearのボーカル、小出氏と同じ見た目のFenderJapanのテレキャスター。あの日、初めて聞いたエレキギター、アンプ、スピーカー、バンドの爆音は僕の頭のネジを外したのかもしれない。

しかし、今の僕がいるライブハウスはその時のライブハウスとはちょっと違う。ギュウギュウ詰めなんて中々無くて、ギュウギュウ詰めになったら涙が出るほど嬉しくなったり、対バン形式で演者がフロアで酒飲んで踊っていたり、時に演者より存在感のある面白いスタッフがいたり、演者の事を家族のように思ってくれるお客さんがいたりするライブハウス。

爆音だけじゃない、愛もあるのが、僕がいるライブハウス。

この記事を書いている人 - WRITER -
渡辺りょう
渡辺りょう 1993年生まれ。静岡県出身。京都のバンド、the seadaysのGt/Vo。 音楽活動以外では、フード出店や大喜利、映画監督等の何をやってるか分からないけど何だか楽しそう、という感じで生きている

Copyright© Band-market , 2020 All Rights Reserved.